「英語は絶対、勉強するな!」について思うこと

英語は絶対、勉強するな!

何度かこの本のタイトルを、人から聞きました。韓国でベストセラーらしいですね。図書館にあったので借りました。

まず著者の経歴。ソウル大学造園学科卒。ドイツに留学。自国でドイツ語を必死に勉強したにもかかわらず、ドイツに行くと聞けない、話せないを経験。ドイツで奮起、自分なりの語学習得のノウハウを構築。その後ドイツのドルトムント大学で空間計画学修士修了。そしてハノーヴァ大学で造園・環境開発博士号取得。

なんか優秀な人っぽい。頭良さげ~な雰囲気漂う。

さて、中身です。私は知らなかったのですが、韓国も学校で英語を勉強してきたにも関わらず、英語ができない人が多いらしいです。著者は、学校での英語の勉強は、数学などの学習科目と同様に、「勉強」するから使えないんだ、と主張しています。ふむふむ。ここまでは同感。

そして英語は「勉強」するのではなく、体になじませなければ使えるようにならないと。例えるなら、ピアノを引きたいと思っているのに、鍵盤の位置やピアノの原理ばかり勉強していてもピアノは上達しないのと同じだと。うまいこというな~と、感心しました。私もそう思います。でもここから怪しくなってきました。

著者がおすすめする英語習得法。第1ステップから第5ステップまであります。ざっと見ましたが、第一印象は、
完璧主義じゃないとできない
かなりの忍耐と努力が必要
キーワードは「粘り強く」か・・・

私には絶対にムリと思いました。

どんな内容か、簡単に説明すると・・・

<ステップ1> 完全に聞き取る
英語の音声を「完全に」聞き取る。まずは辞書をひかず、聞こえたままでいいらしいです。意味を理解するのではなく、発音を正しく聞き取ることに重点をおく。

<ステップ2> 完全に書きとる
ステップ1で聞いた音声を、一文ごとに聞こえた通り書きとる。このときスペルミスは気にしない。そして後で英英辞典で正しいスペルを調べる。そして音読。発音を真似ること。

<ステップ3> 語彙・表現に精通する
ここで、ステップ2で書きとった文をみて、知らない単語を英英辞典で調べる。英英辞典を調べて、そこに載っている知らない単語もまた調べる。延々とこれを行い、知らない単語がなくなるまで繰り返す。

<ステップ4> 生きた英語を完全に体得
ビデオ・DVDを見て、ステップ1から3までを繰り返す。映画がおすすめ。感情・心理・会話・思考パターン・文化を知って、身につける。

<ステップ5> 文化を理解・幅広い多様な英語力養成
新聞、マンガ、広告などを見て、ステップ1から3まで繰り返す。

これらを6日続けたら、必ず1日休む。

どうでしょうか?やりたい?私はやりたくないです。この本には、この方法にアレンジを加えることは禁止と書いていました。少しでも違うことをしちゃダメなんですって。そして疑わずに無心になってがむしゃらに取り組むこと。

ちょっと私にはムリです。始めにプロフィール見て、内容見て激しく納得。勉強家やん。すごい忍耐強くて、多分スタート時からそこそこ英語できたはず。できないと言っても、そのレベルは本当に苦手で、できない人のレベルからしたら、ずっと上なのではないか。著者のいう「勉強」とは、例えばTOEICでいい点をとりたいために、問題集をせっせとやる、という類をいうらしい、というのがこの本を読んでわかったこと。

ステップ2の書きとりって、要するにディクテーションでしょ?!私も昔「やらされ」ました。でもあれ、すごく疲れるのです。労力のわりに、報われない・・・。本当にできない者にとって、細切れに何度も再生ボタンと停止ボタンを押して、何度も何度も戻って・・・なんてね~。ありえない。もう絶対したくないことです、私はね。で、実際そんなことやったって効果なんてほとんどなかった。

とても気になるのが「完全に」という言葉。言語習得に「完全」を求めていたら、自信喪失、疲労困憊、挫折が待っているような気がします。著者は挫折する人の典型として、「短気を起こす」と述べています。つまり、自分には難しくてとてもできない。ムリだ~。と決めつけて止めてしまう、というのです。そうならないために、絶対できると信じること、信じて疑わないこと、そして粘り強く取り組むことと主張しています。

「いや、ムリっていうか、そんなのやりたくないから」と思うのは私だけでしょうか。そもそも、英語が本当にできない人が、英英辞典を調べて、そこで出てきたわからない言葉をまた調べて・・・って、やってるといくら時間があっても足りないよ。普通は途中で嫌になるよね。だって、「完全に」分かるまで、延々と続けなさいって言うのですもの。

英語がなぜ使えないか、とか、理屈ではなく体で覚えるという考えには賛成です。でも方法がねぇ。出来る人は限定されちゃいますね。酷評しているようですが、この本の最後にはとてもいいことが書いていました。

母国語以外の言語を習得して、異文化の人と交流することで、自分がいかに偏った狭いものの見方、生き方をしてきたかがわかりました。(注:著者が指導していた人物の言葉です。)というところ、私もよくわかります。私もそう感じました。私の場合は日本語しか知らなければ、多分わかりようがなかったと思います。

でもこれは、他人に「そう感じなさい」とか、「そうならないと英語を身に付けたとは言えないのです」、とか言うものではないと思っています。その人がそう感じ、それがその人にとってプラスと思えたらいい、それだけのことです。トータルでは、いろんな意味でなかなか興味深い内容でした。