憎しみと愛、差別がテーマの大人向き絵本2冊

3月に絵本作家 黒井健さんの講演を聞きに行きました。講演の中で、黒井さんがイラストを担当した絵本紹介で気になった絵本2冊を図書館で借りて読みました。

2冊ともとても面白い絵本でしたので、紹介します。

だれかがぼくを ころさないで


だれかが ぼくを (PHPわたしのえほん)

文・内田麟太郎、絵・黒井健。1ページ目には、刃物を持った少年が。その少年の向こうに立っている人物を狙っているらしい絵。

憎しみという感情に突き動かされて、少年は向かっていきます。ところがどこかから誰かの声が聞こえ、少年は立ち止まります。この声は繰り返し繰り返し聞こえてきて・・・。

はっきりと思い出せなくても、目の前にいなくても、いつだったか聞いたことのある声でした。殺意にまで膨れ上がった少年の憎しみを救ったその声は?

思い出せないほど遠くかすかな記憶でも、愛されていた確かな時間があったなら、引き返すことができる。愛は憎しみに打ち勝つものなのだと思いました。

猫の事務所


猫の事務所 (日本の童話名作選)

宮沢賢治 作、黒井健 絵。宮沢賢治なんて読むのは、何年ぶりでしょう!この絵本のタイトルは、全く知りませんでした。鉄道の会社にある猫の事務所が舞台です。

その事務所に猫5匹。事務長を筆頭に、4人の書記が猫の歴史と地理を調べるのが主な仕事です。5匹とも黒の服を着ていて、さながら厳粛な裁判所で働く判事のようです。

いかにも聡明な猫たちの集まりなのですが、こんな場所にも愚かな差別行為が見られるのです。1匹の猫が、夜にかまどの中に入って眠るために、身体がいつも煤で汚れています。たったそれだけのことなのに、他の書記たちからいじめを受けているのです。

差別やいじめを受けたときの悲しみや、その行為をするものの浅はかさが描かれています。インテリと理性は必ずしも共存するのではないことを、皮肉っているようにも見えました。

おわりに

黒井健さんのイラストは、2冊とも柔らかなタッチがベースにありながらも、『猫の事務所』ではピリッと引き締まるような空気を感じ、『だれかがぼくを』は荒んだ様子とあたたかな光を感じました。

講演の中で黒井さんは、文にどんな絵をつけるかで印象が変わるとおっしゃっていました。もしもこの2冊に違う絵をつけたら、また全く違う作品になるのでしょう。絵本は面白いなと改めて感じました。

今回は読みたい本が2冊とも図書館に置いていたので、嬉しかったです。週に1-2回は図書館へ行って絵本をたくさん借りてくるのですが、まだまだ素敵な絵本を発掘できそうだと思いました。

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