グリムとセンダックの渾身作

今日も行橋市図書館の洋書絵本レビューです。なんとすばらしい絵本に出会えたのでしょう。図書館で作ってもらった洋書絵本リストを見ていると、閉架の本の中から私の好きなMaurice Sendak(モーリス・センダック)の名前を見つけ、中身も知らずに借りた絵本でした。

Dear Mili

洋書絵本のタイトルは『Dear Mili』。

YL 4.0
総語数 2,197

表紙が素晴らしく「This is センダック」という感じだ~。文字はちょっと多め。神秘的で繊細で、少し不気味さを感じるほどの美しい絵は、センダック好きにはたまりません。まずは絵に見とれ、そして読み始めると、たちまち物語に魅了されました。

ある村に、夫を亡くした女性がいました。女性には子どもが何人かいたのですが、一人の女の子以外は皆死んでしまいました。お母さんはこの子には守護神がついているに違いない、と思うのでした。あるとき戦争がはじまり、凄まじい炎が近くまでやってきました。お母さんは娘を何としても戦争から守りたくて、森の深いところへ一人で身を隠しておくように話します。3日経ったら戻っといで。心配で身を引き裂かれんばかりのお母さんは、娘にそう言って、見送ります。あの子は守護神が守ってくださる・・・そう願うしかありませんでした。

女の子は森をさまよいます。怖くてさみしくて、不安だった女の子に、天使が道案内をしてくれました。不思議な空間へ入った女の子。そこでおじいさんときれいな女の子と一緒に、3日間過ごしました。そしてやっと、お母さんが戻っていらっしゃいと言った日です。お母さんに会いたい、会いたい。でも女の子は、ここを去ることも少しさびしかったのです。すぐにまた来るからね。そう言い残し、お母さんの下へ・・・。

読み終わり、しばらくは動けないほど、衝撃を受けました。戦争の残酷さが、こんな風に表現されるとは、原作者のヴィルヘルム・グリムは(グリム童話で有名ですね)すごいし、またこの物語にぴったりの、素晴らしい絵。感動です。閉架にしておくのはもったいないです。とても素晴らしい洋書絵本が、行橋市図書館にはありますよ。

モーリス・センダック Maurice Sendak 好きになった訳は

ところでMaurice Sendakですが、人によっては絵があまり好きじゃないという方もいらっしゃいます。実は私もその一人でした。でもなぜ大好きになってしまったのか・・・。「これで好きになった!」というはっきりとしたきっかけはないのですが、『In the Night Kitchen』を初めて読んで、それでたまたまセンダックのことを紹介している雑誌事か何かを読んだ頃ですね。その頃私、マザーグースにハマっていまして、『In the Night Kitchen』のようなストーリーがスルリと身体に沁み込んできました。

マザーグースにハマるまでは、この手の空想的な絵本が嫌いではないけれど、それほど理解できるわけでもなかったのです。今は大大大好きです。ということは、きっかけはマザーグースってことになるのかな?マザーグースの洋書絵本、行橋市図書館にたくさんありますよ。

和書の英文学のコーナーには、マザーグースを解説したような本もあります。マザーグースの敷居が高かったら、まずはそういう解説書から入って、興味を持ったらマザーグースの訳本、そしてマザーグースの英語絵本に挑戦してみてもいいですね。子どもの本のコーナーには、邦訳のマザーグースがあります。ある程度英語が読める方ならば、まず英語を読んでから邦訳を読んだ方が楽しめる気がします。