Kindleの洋書で、面白いのを見つけたのでご紹介します。
『Girl Perfect』
Kindle洋書のタイトルは『Girl Perfect』。これは奇形を持つ女の子のお話、フィクションです。あの、これはとても良かったので、思い切りネタをばらします。もしもこれを読もっかな~と思っている方は、ここから下は読まないでください。
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***ネタバレネタバレネタバレネタバレネタバレ***
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"cleft lip and palate"(口唇口蓋裂)というのをご存じでしょうか。唇と口蓋(口の中の上の硬い部分)が、お母さんのお腹の中でくっつかないで裂けた状態で生まれてしまうというものです。こういう奇形が生まれる原因はよくわかっていないのだそうですが、一つの原因というよりは複合的なものと理解されているみたいです。
主人公の女の子は、口唇口蓋裂を持って生まれてきました。女の子、しかも顔ですから、それは深刻なわけです。13歳、お年頃です。9歳になるまでに、9回(?だったかな?)の手術。生後3ヶ月から、手術するというのですから。
学校でいじめられるわけです。顔のことで。もうホント、容赦ないです。知らない子たちが集まって話をしている横を通ったら、彼女を見た瞬間、沈黙。視線は顔の傷に。クラスの男の子から、ひどいいじめを受け、女の子たちからは、嫌な目で見られ・・・。
彼女の心は傷ついていました。そしていつもみんなから笑いものにされ、委縮し、人前にでることがとても怖かったのです。あるとき酷いいじめを受け、ついにキレた!男の子を殴ったのです。校長先生の部屋に両親と共に呼ばれ、なぜこういうことになったのかと説明を求められるのです。
でもね、説明するってことは、また傷をえぐるようなもので。言いたくなかったのですが、勇気を出して泣きながら説明しました。両親の気持ち、どうですか。つらいですね。女の子も・・・。
友だちは、少ないけどいるにはいるのです。でも・・・注意深く読むと・・・これ、友だちなん?と思ってしまう言動。女の子は、後にそのことに気がつきますが、このときは全く疑いもせずに友だちだと思っています。お兄さんがいるのですけど、妹のことを心配して、提案をします。
それがなんと、学校で行われる演劇のオーディションを受けること。え?あえて人前に立つん?スポットライト浴びて?しかも口唇口蓋裂というのは、声も普通とは違うのです。当然ですよね、口蓋の形が違うのですから。
結局とてもいい役を得た女の子。練習の日々。そして淡いロマンスも。その辺は、まあ読んでのお楽しみ。
何度も何度も、読みながら涙がこぼれてくるのです。女の子の心の叫びを表現した部分とか。両親の思いとか、その辺りで。
演劇が大成功、両親も見に来てくれました。いつしか女の子は、自分に自信が持てるようになっていたのです。演劇だけではなく、交友関係とか恋愛によって起こる問題が、彼女を成長させてくれたのです。
彼女は最後にこう言います。臆病だったり、友だちできなかったり、クラブに参加できなかったり、教室で大きな声で発言できなかったりした原因は、自分自身。誰のせいでもない、自分が原因だったと。
酷い呼び方で自分のことを呼ぶ子がいたけれど、自分だって自分のことを酷い呼び方していた。鏡を見て、自分のことを醜い、奇形だと思っていた。自分なんか、何の価値もないと思っていた。でも本当は違う。自分が自分の一番の友だちになってあげなきゃ。一方的にその女の子を嫌って去っていった女友達が、謝りにやってきました。その時、女の子はその女友達の本当の姿に気づくことができました。以前は嫌われたくないばかりに、その女友だちの本質的な部分に気がつかなかった。そしてもっとも大切にしなくてはならない人の存在にも気がついた。
ラストシーンはスクールカウンセラーとの面談。彼女は胸を張って答えます。私はこのままの私で完璧なんだ、と。
「奇形」というキーワードでストーリーが展開していきますが、伝わってくるメッセージはもっと広いです。自分に自信を持つことの大切さ、自分を大切に思う気持ちの尊さ。そういう基本的ではありますが、自分のことになると見落としがちの大事なものに焦点があてられています。自分を真正面から見ることができて初めて、他人の本当の姿を見ることができるのではないだろうか、と感じました。
ありのままの自分を真正面から見つめ、認め、愛することは、とても勇気のいることだと思います。そしてその勇気は、強さや愛へと広がっていくということもわかります。ポタポタと涙が落ちつつ、読了です。