図書館で借りた本がとても面白かったので、紹介します。
ドブロクをつくろう
間違っても「ドブロク作ったんだ~♪」と公言しないように。たとえ自分が家で飲むためだけにお酒を造ったとしても、無許可だと罰せられます。酒税法により、そう決められているからです。
料理でよく使われる「酢」。これは酒から造られるので、家庭で「酢」を作ることも酒造法で禁じられています。驚き!!
家でお酒を造るためには、製造の免許を得なければなりません。たとえそれが自分が家で楽しむための目的しかなかったとしても。見つかると懲役または罰金です。
梅酒を作っている家庭は多いと思いますが、注意しないと違反になることもあるので気をつけましょう。国税庁の【自家醸造】について読んでみると、何やらわかりにくい文章で梅酒作りは以下の条件を満たせば例外的にOKだよっていうことが書かれています。
酒税法の存在意義は?
ドブロクを作るとはそういう意味もあって、なかなか興味深いものでした。私が大学の法学部時代に「ドブロク裁判」について学びました。論点は「幸福追求権」。文章で読み、もともと人権意識が強かった私ですから、内容はよくわかったつもりでいました。けれどもこの本を読んで、本当はわかっていなかったのだな、と感じました。
農民がドブロクを作る意味、本当の意味での自立、「しなくてすむ」自由ではなく「できる」自由(~からの解放)について、理屈ではなく生活して経験した中から出てきた声を聞いて、なるほどと思いました。想像してみました。関西に住んでいたときよりも、農家が物理的精神的に近いので、想像に難くありません。それでも実際に経験した人に比べれば、何もわかっていないも同然なのでしょう。
「幸福追求権」なんてかっこつけた言い方してるけど、中身は本当に人間臭いもの。本当は法廷で聞く法律用語とはそういうものなのでしょう。けれども法律家ではない一般市民たちからすれば、法律用語はどこか冷たさを感じてしまう。温度差。
そういうこともわかった上で法律の勉強をしていても、やはりわからなかった部分、判例を読むだけではわからない部分がある。しかもそれがめちゃめちゃ尊い。きちんと文章化できない自分の未熟さがもどかしいです。
ドブロクというテーマで、お酒の知識を得ることになった私。驚きの連続でした。お酒は家庭で作るのとは違い、工場で作るものには添加物をたくさん入れています。添加物、即「不健康」という意識はもちろんありません。理系でもあるので、その辺の知識というか、センスも持ち合わせています。けれども味がやっぱり・・・残念ならしいのですね。私は飲み比べたことがないので、「らしい」としか言えません。
ところで酒税法があるこの世の中免許を持たないのなら、お酒が飲みたければ買うしかありません。ここで一つ、自由が奪われます。添加物の入っていない純なお酒を手に入れることができないのです。もしかしたら、必死で探せばあるかもしれませんよ。でもそうまでして、普通はお酒探さないでしょう。「自由」とか「自立」の意味を、生活に密着した実例を出して書かれているので、よくわかりました。
そしてこの本は多数の有識者によって書き上げられています。この本が共通して訴えているのは酒税法の理不尽さ。
いろいろ書きたいことはあるのですが、一つだけ。ウィキペディアに「密造酒」の説明があります。「密造酒」とは、酒造法に反して無許可で作ったお酒のこと。このページにこんな説明がありました。
君主政治下においては王侯・貴族が政治を私物化することもままあったが、この中では自身の生活でより贅を尽くすため、酒税を始めとする嗜好品には重税を科すことも行われた。また戦争という国家の沽券をかけた事業には莫大な経費がかかったが、酒税は近世において大衆から資金を広く徴収するには「非常に便利の良い」口実ともなった。(ウィキペディア「密造酒」のページからの引用)
このこと、『ドブロクをつくろう』にも書いていました。こんなこと、たくさんの人が知っていることかもしれませんが、それでなぜ黙っている?というか抵抗せずにただ従っている?という気持ちが抑えられなくなるのも理解できる気がします。
無知であれば、そのことについて何も感じることはできません。でも知ると、いろんなことを考えますね。
ドブロクというもの、一度は飲んでみたいけれど・・・酢だって、手作りしてみたい。ワインも。ビールも。という気持ちはむくむくと湧いてはくるものの、どうすっかな~(笑)罰金は払いたくないし、刑務所も入りたくない(笑)
そうそう、酒税法見るとわかりますが、お酒を作る許可を得たとしても、1000リットルあたり、10-20万円も税金払うのですって。