行橋市図書館にある和書の紹介です。この本は図書館の方からのおすすめです。DVD付き絵本です。
2011年3月11日に起きた東日本大震災で、信じられないほどの大きな被害がありました。この絵本の震災は大きな被害のあった陸前高田市。みんなから愛され親しまれていた7万本の高田松原が津波にのまれ、奇跡的に一本の松が生き残ったというお話しです。
希望の木
とても美しい絵です。松を擬人化したストーリーで、子どもたちにもわかる表現で語られていきます。なぜ自分だけが生き残ったのか。一本松のレイラは悲しみます。自分も早く家族のところへ行きたいと、毎日泣いて暮らしていたのです。
あるとき夢に出てきた家族らに言われた言葉に、レイラは気がつきます。「生きなければ」と。今の、この瞬間のことだけにとらわれていてはダメ。自分の気持ちだけにとらわれていてはダメ。未来へ目を向けよう。自分を守り通してくれた家族たちの気持ちを考えよう。「誰か一人でもいい。生きていてくれたら、何十年何百年と命をつないでいける」という家族の言葉に生きる勇気をもらったレイラ。
この言葉はあまりにもシンプルなので、すっと心の中に入ってきました。けれどもこのシンプルさとは裏腹に、心の中に入るとわーっと広がって、言葉では表現しがたい大きな感情へと膨らみました。
付属のDVDには、津波前の陸前高田市の町並みと7万本の高田松原が映し出されていました。それとは対照的な津波後の映像。とても同じ場所とは思えません。「絶望」「地獄」がただ目の前にあったのかもしれません。多くの方の命が奪われ、街が壊れ、人だけではなく動物や植物の命も奪われてしまいました。
街の復興に立ち上がる人々の紹介が後に続きます。県外からもたくさん。ご家族を亡くされて、絶望のふちにあった人たち。レイラのように、毎日家族のもとへ行くことばかり考えたのかもしれません。けれどもそんな人たちが復興に向けて立ち上がる姿。もうそれだけで命のきらめきとというか、強くて美しくて尊い輝きが感じられます。
全国各地で街の復興への活動が始まり、津波で折れてしまった高田松原の松に、新しい命を吹き込もうと動き出す人々が現れます。一本松から接木で新しい命が生まれ、松ぼっくりからも新しい命が生まれました。
命のバトンリレー。まさにそういう言葉がぴったりだと思いました。文章は新井満さん、イラストは山本二三さん。挿入歌の作詞作曲は新井満さんです。大きな勇気をもらいました。すばらしい絵本を紹介してくださり、ありがとうございました。