カブトムシの角がサナギになると突然生えるわけ

今年の秋、我が家にとってエキサイティング&ビッグなニュースがありました。それはカブトムシの角ができるメカニズムが解明されたことでした!カブトムシ博士から、角ができる姿は神秘的と聞いていましたが、驚きのメカニズムでした!

フェイスブックに日々のことを投稿していますが、夏はカブトムシの話題が多かった我が家。ぽこすけはカブトムシ博士になると言いだし、図書館へ行くと必ずカブトムシの本を借り、母がそーっと一緒に借りたファーブル昆虫記にも夢中になりました。

そういうわけで、今回はカブトムシの話です。

蛹になって突然ニョキっと現れるカブトムシの角の謎が解明?!

カブトムシが好きな子どもは多いですね。特に男の子に多いですね。大人でも大好きで繁殖している人がいますよね。我が家ではカブトムシ博士と呼んでいる男性から今年の夏に幼虫を譲り受け、成虫になるまでの過程を観察しました。

多くの人の関心事は、幼虫から蛹へ、そして蛹から成虫へと形が変わっていくことではないでしょうか。特にカブトムシのオスの角、りっぱですよね。なんとその角は、蛹のときに急に現れるらしいのです。気がついたら生えてたってやつ・・・。

どのようなメカニズムで角ができるのか、今まで知られていなかったのですが、とうとう名古屋大学の研究グループが解明したとのこと。虫嫌いの私もいつのまにか、子どものためということもあって観察に夢中になっていました。今では成虫たちが残した子孫を我が家で育てているという経緯もあり、ぜひその論文を読んで角の謎を知りたいと思いました。

もちろんニュースになっていたので、新聞記事を読めばだいたいのところはわかるのですが、凝り性なので2017年10月24日付で英オンライン国際科学誌『Scientific Reports』に発表されたその論文を、自分で読みたいと思いました。専門的なことは詳しくないですが、生物学が大好きで得意だったことと英語も役に立つと思い、ぽこすけのため、そして自分のワクワク感にしたがって読みました!

以下、私なりに学んだことや感じたことを書いていきます。素人感いっぱいの文章ですので、一般人にはわかりやすいのではないかと思います。

カブトムシの形態変化<完全変態>

まずは基礎知識として、カブトムシが卵からどのように成虫になるのかを、簡単に説明します。

カブトムシは卵から孵化して幼虫になります。初めはとても小さな幼虫なのですが、腐葉土を食べてどんどん大きくなり、蛹になるまでに2回脱皮をします。

卵からかえったばかりの幼虫を初令幼虫または1齢幼虫といい、脱皮すると2齢幼虫、次に脱皮すると終齢幼虫または3齢幼虫という呼び名があります。

その後3齢幼虫のまま、冬を越します。晩春~初夏にかけて蛹室(ようしつ)という部屋を作り、蛹へと成長します。約1か月蛹で過ごした後、成虫になって土の中から出てきます。

カブトムシのように卵から幼虫、蛹そして成虫へと、ダイナミックに形態が変わることを完全変態というのだそうです。どのような仕組みでこんなに形が変化していくのかも興味深いです。

なぜ蛹になると角が突然現れるのか、そのメカニズムとは

いきなり核心に触れますが、カブトムシの角は袋状になった上皮(角原基)が、幼虫時代から頭の部分にあるのです。蛹になるときに体液がその袋に流れ込み、膨らむと角を形成するというのです。超シンプル・簡単。やっぱり自然の道理には無駄がないですね。カブトムシが蛹になり角を形成するまでの時間はたったの2時間なんです!

そして実は幼虫の頭の部分にある角原基は、孵化まもない初令幼虫のときに形成され始めるのだそうです。幼虫の成長と共に、角原基も折りたたまれたままシワが増えて、構造が複雑になっていきます。

さすがに研究者は「なるほど、角は袋が膨らんでできるのか」では終わりませんね。論文には本当に袋に体液が流れ込んで膨らむだけで角になるのか、実験をして確かめています。

角の形成に細胞の活動は関わらないのか

命あるものの体は細胞でできています。カエルに足が生えたり、トカゲのしっぽが切れてもまた生えてきたりするのは、細胞の活動によるものです。人間もお母さんのお腹の中で、卵から魚みたいになり、だんだん人間の形が作られて行きます。これも細胞の活動によるものです。細胞分裂をくり返し、必要な組織を作っていくのですよね。

一方変態をする昆虫は、幼虫の間に成虫の各部位がペッタンコの状態で形作られ、それが展開して完成形(成虫)になることは、以前から知られていました。けれどその過程には細胞の活動(細胞分裂や細胞遊走など)も関わっている場合があり、単なる展開という単純なものとは限りませんでした。

じゃあカブトムシの角は?同じように細胞の活動が関わっているのかどうか、確かめなくてはなりません。それを確かめるために、どのような実験がなされたと思いますか?

細胞の活動が関わっているとなると、ある程度の時間が必要になります。そこに着目して、カブトムシが蛹化する直前に外皮から角原基を露出させた後、幼虫の腹部に圧をかけて角原基へ体液を流し込みました。

その結果、角は1分以内で膨らみました。つまり機械的な力を加えて、一気に体液を流しても角は自然な形で膨らんだのです。短時間で自然な角の形に膨らんだということは、そこに細胞の活動は関与していないということになります。

さらに今度は角原基の組織を薬剤で固定して空気を流し込んでみると、わずか数秒で自然な角の形に膨らみました。この実験では、生きた細胞ではなくても角が形作られることを確かめたのです。

これら二つの実験を通して、カブトムシの角は細胞の活動は関わっておらず、折りたたまれた角の上皮に体液が流れ込み、膨らんでできるということが確かめられました。

流れ込む体液に関して~蛹の体の中はどうなってるの?

この論文を読むにあたり、私に欠けている知識を調べました。今まで何となく聞きかじっていたことは、蛹になると一度体をドロドロに溶かして、再構築すると。

それは間違いではないけれど、正確な知識ではないらしいです。蛹になると酵素によって組織が溶かされるのだけれど、すべてが溶けるわけではなく、成虫になっても使う組織は残っているらしいです。角原基に流れ込む体液は、具体的にどのような成分でできているのかはわからないけれど、蛹の体の中が流動性に満ちていることが角の形成にとっても重要になっているのかなと思いました。

膨らむだけで、なぜ角の形になるのか

角原基は幼虫の成長に伴い、シワが複雑になってくるのです。角の形とこのシワとの関係を調べるために、コンピュータを使って解析したのです。もうこの辺りのことは、はっきり言ってよくわかりません。

角原基は折りたたまれた上皮で、それがシワを増やしながら2次元的に成長していきます。シワを伸ばすとどんな形になるかということを、3次元的に解析していくようです。解析してわかったことをいくつか挙げてみましょう。

シワの模様の中に同心円状になっている部分が二つあり、それが膨らむと角の先端部分でとがった4か所になることがわかりました。アコーディオンのように折りたたまれたようなシワ部分は、角のまっすぐに伸びているところに相当することがわかるなど、シワを見ることで膨らんで立体化したときの形状がわかるようになったのです。すごいですね。

それ以上深いことはわからないので、この辺りまでにしておきます^^;

今回読んだカブトムシの角原基に関する論文は、Complex furrows in a 2D epithelial sheet code the 3D structure of a beetle horn (Scientific Reports | 7:13939)

私が知らなった昆虫の世界

ぽこすけが昆虫に興味を持つようになって、私も嫌々関わってきました。私は虫が苦手なので、今までは自分から飼育したり観察して理解を深めよという気持ちにはなれませんでした。

けれどもこわごわ子どもが虫取り網で採ったセミなどの昆虫を見るたびに、非常に精巧に作られている体がいったいどのように作られているのか、不思議には思っていました。今回、カブトムシの角限定ではありますが、その学びを通して昆虫の形態形成のことも、チラリと垣間見ることができました。自然の作り出した芸術ともいえる完成品の緻密さと、完成形に至るまでの想像を絶する工程に、ただただ驚きの連続でした。

子どもと一緒に何かをしていると、学びがたくさん。新鮮です!!余談ですが、脱皮に関して今まで考えたこともなかった発見もありました。脱皮をする生き物は昆虫に限らずいますよね。普通脱皮をくり返して大きくなるじゃないですか。脱皮した後の新しい皮、シワシワなんですね!だから大きく成長できるんですね~。え?子どもならみんな知ってるって?Σ(・□・;)