家族で作る子どものデスク~4.ほぞ組み加工

今回はデスクの脚まわり。デスクの脚はほぞ組みという方法で組みます。「ビスで留めてハイ、できあがり^^」では、この先何十年と子どもに使ってもらうには、あまりに切ない。手作りであることと同時に、美しいデスクであることにもこだわっています。

そんな私達の願いをかなえるべく、「ものづくり工房」の原さんが「酔工房」という家具作り20年以上という家具職人さんの元へ連れて行ってくださいました。そこでベテラン家具職人さんの指導のもと、デスクの脚組みで採用したほぞ組みという加工をしてきました!

けがき

「酔工房」へ向かう前に、ものづくり工房にてほぞ組み加工をする準備として、「けがき」をしました。これがこの日の始まりの作業でした。「けがき」とは、木材に薄く傷をつけて印すことです。 穴あけの位置を決めたり、切り出しの位置や基準の線を決めるために行います。

けがきからはじまった
けがきからはじまった

これがまた意外に大変でして。慣れていないからだと思いますが、頭が混乱してくるのです。たとえば「この木材はデスクの脚、右後だから、ほぞ穴はこっち側に開けるので、この位置にけがき。」「この脚は左前なのでこっちの面にほぞ穴を開けるから・・・」という具合。図面があっても頭の中で立体を想像するのが超苦手な私。立体感覚が乏しいというか・・・展開図を書けと言われると、頭がショートしそうになる類の人種です。それに比べてそういうことをいとも簡単にしてしまうダンナちゃんなのに苦戦。

それにほぞ穴、ほぞは木材に対してどれぐらいの幅をもたせるかということも、よくわかっていませんでした。これは後に、「酔工房」へ行ったときに教えてもらうことになります。

ほぞ穴の印
ほぞ穴の印

まずはわからないなりにも、一生懸命考えて作業しました。けがきという言葉も知らなかった私。始めはとにかく印をつければいいのだと思っていたので、鉛筆でほぞ穴やほぞを作る箇所に印を入れていたのです。工房に来られていた職人さんと原さんから、「毛引きを使い~」(←こんな言い方ではなかったですが^^;)と言われて、「毛引き」とやらを出していただきました。

これが毛引き
これが毛引き
毛引きを使ってけがき
毛引きを使ってけがき

なるほど、この刃で木材に傷をつけて線を描くのだなと納得。鉛筆書きの上からどんどん印をつけていきました。慣れてきたころ、「こっちは2本いっぺんに線が引けるけど、ちょっと難しいよ」と教えてもらったほうの毛引きを使い始めました。

一度に2本線が引ける毛引き
一度に2本線が引ける毛引き

ダンナちゃんが2本の刃の幅を調整してくれました。そして恐る恐るトライ・・・「お~!便利やん、コレ」。そして残りの作業はこっちを使いました。

線の幅を調整中
線の幅を調整中

やってみると、思ったより簡単にできました。

一度に2本は便利
一度に2本は便利
われもこも毛引きを使ってみた
われもこも毛引きを使ってみた

いよいよ「酔工房」へ

工房の入り口にかかった素敵な看板
工房の入り口にかかった素敵な看板

ものづくり工房から車で少し平尾台方面へ走ると、「酔工房」がありました。もう現役を引退されたということで、木工機械が動く音は聞こえず、ひっそりとした工房は私達を待っていてくれました。家具職人さん夫妻が出迎えてくださり、デスクの木材を軽トラから降ろし、スタートしました。

設計したデスクの概要を伝える

まずはどんなデスクを作ろうとしているのか、持ってきた木材のパーツの説明を、ダンナちゃんが作ったCADの図面を家具職人さんに見てもらいながら説明しました。一通りの説明が終り、家具職人さんが木材を手に取り、サササっと印をつけ始めました。なんという慣れた手つきでしょう。何でもない動作なのかもしれませんが、感動しました。まだまだこの先驚きの技が見れるというのに、木材を触る手つきにすでに感動していました(笑)。

とても基本的なことから教えていただきました。下の写真はデスクの脚4本ですが、このように印をつけることによって、前後左右の位置とさらに上下の位置も簡単にわかる!右前、左後ろ、上なんて一本一本に書かなくてもいいのですね。すばらしい。

家具職人さんの手つきは違う
家具職人さんの手つきは違う

匠の技 家具作りの精度

脚はカンナがけまでしていましたが、実はまだきっちりと幅を合わせていませんでした。家具職人さんからすぐにそこを指摘されました。家具を作るときに許される誤差は0.2mmまでといわれ、今のデスクの脚では完全にアウト。まずはカンナがけをしてもなお、表面がまっすぐではない面を、下の写真のようなカンナを使って一瞬でまっすぐにしてもらいました。

家具職人さんの目はするどく、木材のゆがみなどをすぐに見つけて、ちょっとした修正はこの機械でしてくれるのです。すごいです。これを見て、数日を費やした私達のかんながけはいったい何だったのだろうとさえ、思いました。けれど「手作り」ということで始めたのだし、それはそれ。貴重な体験でした。その経験があるからこそ、今見える(わかる、感じる)ものがあるはず。

カンナが一瞬でかけられる機械
カンナが一瞬でかけられる機械

次は脚をカットしました。脚の長さはまだ切り出したままで、整えていなかったから。下の写真のように、必要な長さを測りました。素人が長さを図るといっても、なかなか直角に線を引くことはできませんよね。そういうやり方もきちんと教えてくださいました。酔工房ではさっき使った毛引きの刃だけのようなもの(彫刻等のようなもの)でけがきしました。家具職人さんの監督の下、スマートに作業が進みます。

寸法測るのから全部やり直
寸法測るのから全部やり直

脚の長さを整えた後、すごい機械が登場しました。仕上げたい幅(mm)を小数点1桁まで設定し(つまり100μm単位ですね)、設定幅まで削ってくれる機械。下の写真がその機械です。

カンナで木材の幅を均一に
カンナで木材の幅を均一に
出てきた木材を支える
出てきた木材を支える

機械の向こう側にいて、仕上がって出てくる木材を受け取ります。ぽこすけもお手伝い。寸法にバラつきがあったので、2回に分けてこの機械に通して規定の幅に合わせました。一通り終えた後、2本ずつだったかな?最後にもう一度、機械に通して終了。

精密に仕上がったデスク脚幅
精密に仕上がったデスク脚幅

Wow!すばらしく精密に削られたデスクの脚4本。美しいです。

いよいよほぞ組み加工の準備

はじめに家具職人さんは、ほぞ組み加工の位置やサイズなどを決めるために、CADで設計図を作りました。ダンナちゃんが作ったCADの図面は、デザインだけです。脚の長さや横桟を入れる場所などを示した外観だけの図面です。
これに対し、家具職人さんが作った図面は、どのようにほぞ組み加工を施して、脚を組んでいくかを示した図面です。下の写真がその図面です。この図面を見ながら、これからほぞ組み加工に取り掛かるのです。

CADで書いていただいた図面
CADで書いていただいた図面

ほぞ穴加工

作業を始める前に、4本の脚を前2本後ろ2本の2つに分けました。前と後ろでほぞ穴をあける数と位置が違うから。分けた後、チョークで印つけ。私としては、こういう何気ない小さな作業に感心し、プロの工夫というか作業を間違いなく進めるコツを感じてしまいます。

チョークを使う
チョークを使う

始めに木材にほぞ穴の場所の印付け。これも家具職人さんがやり方を教えてくださったので、スマートに作業が進みました。デスク脚に作るほぞ穴は、左右の後ろの脚に2箇所ずつ、左右の前に1箇所ずつ。2箇所ほぞ穴を作るにあたり、CADで図面を作る段階で2つの穴が干渉することがわかり、急遽場所をずらすことにして、そのように図面を作っていただきました。意外と複雑。外観のデザインだけでは、そこまで頭が回らないが普通でしょうね。もうこのあたりに来ると、私はチンプンカンプンで、ひたすら記録のための撮影に専念です(笑)。ダンナちゃん、がんばれ!(笑)

ほぞ穴の場所けがき
ほぞ穴の場所けがき

要所要所で混乱しないように、これからの作業について絵を描きながら説明もしていただきました。

丁寧に説明していただきました
丁寧に説明していただきました

長かった!ここまで本当に長い道のりでした。やっとほぞ穴を開ける作業が始められます!

ほぞ組み加工

ほぞ穴をあける場所を決めたので、いよいよこれからほぞ穴作りです。すごい機械が登場しました。

ほぞ穴を開ける機械
ほぞ穴を開ける機械

これは角のみ盤というそうで、その機械でほぞ穴をあけていきます。角のみの位置を調整するのは、家具職人さんにしていただきました。

穴を開ける位置を調整中
穴を開ける位置を調整中

まずはお手本を見せていただき、その後ダンナちゃんが穴あけに挑戦です。すごい勢いで穴が開いていきました。機械の威力はすごいし速いですね!!

ダンナちゃん初体験
ダンナちゃん初体験
すごい勢い
すごい勢い

あっという間にほぞ穴すべて終了。ここまでの道のりは長かったけれど、穴あけはすぐに終わりました。機械の設定はすべて家具職人さんにしていただいたから、こんなにすぐに終わったのでしょう。自分ですべてやっていたら、こんなに複雑な工程なので、失敗してる可能性大でした。

きれいにほぞ穴が仕上がった
きれいにほぞ穴が仕上がった
穴の中はこんな感じ
穴の中はこんな感じ
違う面にぶつからないようにほぞ穴を開けた
違う面にぶつからないようにほぞ穴を開けた

一本のデスク脚に違う面から干渉しないように2個のほぞ穴をあけることもできました。

ほぞ穴完成
ほぞ穴完成

すばらしい、美しいの一言につきます。

ほぞ加工

ほぞとは、さっき作ったほぞ穴にはめ込む凸状のもの。この凹凸の組み合わせで木と木が接合できます。だからほぞとほぞ穴で「ほぞ組み」というのかしら、と私の勝手な解釈。

実はほぞ加工、すべて家具職人さん任せ。いいのかな~と思いつつ、せっかくの機会。プロの技もみたいし、きれいに仕上げたいし。「自分達の手作り」というコンセプトをかなぐり捨てかねない行動かもと思い、ダンナちゃんと顔を見合わせましたが、二人ともやはり「見てみたい」という欲求が勝ってしまいました。

アイデアは自分達のものだし、できない部分だけ助けてもらったと考えることにしました。大事なデスクに変わりはありません。最もこだわるところは「すべての工程を自分達の手で」というよりも、「長く使えて愛着が持て、美しいもの」。今回思い立ったきっかけは、既製品では予算の問題もあり、なかなかそういうものに出会えないと思ったからでした。「家族が一緒に作る」というコンセプトも、崩れたわけではありませんし。

そういうわけで、ほぞは職人さんが作ってくださるのを夫婦でじっと見つめていました。本当に手際がよく、どんどん進んでいくのを見るのが気持ちよかったです。

ほぞを加工
ほぞを加工
ほぞ完成
ほぞ完成

速いし美しい。ほぞはほぞ穴に差し込むときに、面取りする予定です。普通はこんな風に自分達が設計したデスクの木材加工を細かい設計図作り込みで、家具職人さんにしていただくなんてないことだし、それにもし依頼してもすごく費用がかかりそう・・・。こんなこと書いていいかわかりませんが、今回は「ものづくり工房」原さんの人脈により、ご好意でしていただきました。なんという幸せ。深く深く感謝します。

ありがとうございました!

番外編 なごみ系

ぽこすけはさすがに若干5歳なため、工房に張り付いてデスク作りを見ることはできません。丁度工房の前には緑がいっぱい広がるお庭がありました。家具職人さんの奥様が、ずっとぽこすけについて面倒を見てくださいました。
そうなんです。工房でもそれ以外でも至れり尽くせりの待遇で。思い出すだけで申し訳ない気持ちです。

工房の前にあるお庭
工房の前にあるお庭

お庭で空蝉探しに夢中になるぽこすけ。一枚の木の葉に2つの空蝉がくっついているのを見つけて、工房へやってきてみんなに「見て見て!」と見せてくれました。とても楽しそうでした。

ぽこすけは空蝉に夢中
ぽこすけは空蝉に夢中

お庭にあったブルーベリーの果実を採ってお味見させてもらったり。おいしかったとのこと。

工房での作業が終わると、ティータイム。最後の最後まで、お世話になりっぱなしでした。お話しの中で、家具職人さんが大阪出身であること、もともとはサラリーマンだったこと、ずっと関西にいらして比較的最近になってここへ来られたとのこと。奥様は九州生まれですが、ずっと関西の生活。他にもいろいろな共通点を見つけることができて嬉しかったです。

もちろん木工のお話しも弾みました。私はほとんど立ち入ったことがない世界ですが、興味深いお話でした。

行橋に来て4年目。楽しいことに首を突っ込んで流れに流れて、いろいろな素晴らしい人々に出会ってきました。これからもさらにさらに、行橋、京築をディープに楽しんでいきたいと思います。

次回は・・・

デスク作りはまだまだ続きます。酔工房さんへは、再度訪問の予定です。天板の蟻桟加工も、おそらくここの工房で・・・。